小説「ベジソルジャー」プロローグ1&2

プロローグ1

ここは西の国「ロマンチア」の首都・バロンシティ。冬の一大イベントであるクリスマスを控え、街中は大いに賑わっていた。イルミネーションが華やかに輝き、どこからともなく楽しげなクリスマスソングが聴こえてくる。雪がちらつき、ときに風が轟音を上げているのにもかかわらず、街は熱気を帯びていて、厚手のコートやマフラーに身を包み行き交う人たちは一様に気色ばんでいた。

バロンシティは、世界でも有数の大都会。高層ビルが建ち並び、ビジネスもカルチャーも、いわば、この世のすべてをリードしていると言っても過言ではなかった。世界中から人が集まる、まさに憧れの街。それが、ロマンチアの首都・バロンシティだ。

点在する大型の商業施設は、どこも人でごった返していて、そこを訪れる誰もが、誰かのためのギフトを探していた。特に、おもちゃ売り場は顕著で、目移りしそうなほどカラフルな無数の宝物を前にした我が子の嬉しそうな顔を見て、親たちも柔和な笑顔を浮かべている。

「クリスマス前のおもちゃ売り場には幸せが溢れている」

これはある作家の言葉らしいが、この考察に間違いはないようだ。

マイルスは、5歳になったばかりの娘のケリーを連れてバロンシティで最も人気の商業施設にやって来た。それはクリスマスの1週間前の土曜日だった。

地下の駐車場に車を停め、エレベーターに乗った。混雑しているエレベーターが動き出すと、大人たちの間に埋もれたケリーがじっと見上げてきた。その青い目はキラキラしている。プレゼントを買ってもらえるのが待ち遠しいのだろう。そして同時に「この扉が開いたら、寄り道をしないで目的の場所に行くのよ」という圧力をかけているようにも思えた。娘の可愛らしさと強かさを感じ、マイルスはケリーの成長を心底喜んでいた。

エレベーターの扉が開くと、パドックから馬が飛び出すように、一斉に子どもたちが駆けだした。大人たちは大慌てだ。ケリーも負けじとマイルスの手を引き、小ぶりの大股で歩き始めた。目的の場所は動きもしないのに、その足取りは一歩、また一歩と速くなっていく。

暖房が効き過ぎているせいか、おもちゃ売り場に到着すると、マイルスは少し汗をかいていた。ケリーは隣で口元が緩んでいる。「わぁ~!」という歓声が今にもこぼれ落ちそうだ。マイルスは着ていたコートを手に持ち、ケリーと一緒に店内に入った。

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