小説「ベジソルジャー」3

【目次】

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「はぁ~。疲れた。お腹いっぱい」

キイは座り込み、後ろに手をついて細い足を投げ出している。

「まだ何も食べてないだろう?」

そうアカが言うと、キイは舌を出し「おじいちゃんたちのスピーチでお腹いっぱい」と笑った。

キイが帰って来たこの日、エノルは朝からお祭り一色だった。村中に国旗が掲げられ「おかえりキイ」と書かれた横断幕が畑から畑へいくつも張り出された。

村の長老たちは大張り切りで式典を準備。と言っても、彼らは口ばかりで自らが動くはずもなく、実働部隊はアカやアオ、ミドなど若者たちだった。アオがひとつの文句も言わなかったのは、キイのためだったからに他ならない。

キイがエノルに到着すると、村民が総出で出迎えた。鳴り止まない拍手の中、キイは恥ずかしそうにしていた。その後、村役場で催された式典では、我も我もと長老たちが壇上に上がり、スピーチを行った。

「うちの村に、こんなにもじいさんたちがいたのか」

アオの皮肉にアカも思わず吹き出してしまうほど、入れ替わり立ち替り長老たちのスピーチは延々と続いた。この間、キイは嫌な顔ひとつせず、話に耳を傾けていた。

「道中、疲れたろうに、ごめんね。じいさんたち、張り切っちゃって」

シロが労うとキイは「全然」とかぶりを振った。

「私より、みんなの方が疲れたんじゃない。いろいろ準備してくれてありがとう」

感謝を伝えられ、素直じゃないアオもさすがにまんざらでもない。アカが目を合わせると、アオは少し気まずそうに首をすくめた。

「それはそうと、やっぱりアカの家は落ち着くな。なぁミド?」

話を変えようとアオはミドに話を振るが、ミドはいつもながら微笑むだけだった。

日が暮れて一日がかりの式典がようやく終わり、5人はアカの家に集まっていた。

ジャンに昔ながらある平屋づくりで、部屋には囲炉裏がある。暑い季節のため、火は入っていない。その囲炉裏を囲んで上座にキイ、右からシロ、アカ、ミド、アオの順に座っている。

互いに徳利に酒を注いで乾杯した。

今宵の肴は、ミドの畑で採れたばかりの緑の実にチーズを乗せて焼いたのと、アオの畑で採れた瑞々しい青い野菜の漬物だ。5人は同じタイミングで一気に酒を飲み干した。

「こうやって5人で集まるのは、いつぶりだろう?」

アカが聞く。

「5年ぶりくらいじゃない?」

シロが答える。

「いや、まだ4年半くらいだろう」

アオがつっこむ。

「ほんと細かい……」

シロが突っかかる。

「だいたい、お前はガサツなんだよ」

アオも突っかかる。

「まあまあ」

アカがなだめる。

「お前が甘やかすからだよ」

アオがアカを責める。

「ガサツとかひどくない?なに、だまってんのさ」

ミドもシロに責められる。

「なんか懐かしいね」

キイが大笑いする。すると、みんな笑った。

こんな調子で何でもない話に花が咲き、5人は久々の再会を存分に満喫した。

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